2015年1月15日に、スイスフランが急激に高騰し市場が大混乱する騒ぎが起こった。これは、スイス国立銀行が為替介入上限を撤廃したことが原因となっている。このスイスフランショックから、初心者でも簡単にできるFXで大損をしない方法を学ぼう。
為替介入の上限というのは、EURCHF(ユーロスイスフラン)価格を1.2以下にしないという政策で、スイス政府がほぼ無限に買い支えするというものだった。2011年夏頃からEURCHFは買われ始め、2015年初めまでそれを維持し続けることとなった。

損失シミュレーション
もしEURCHFのロングポジションを保有していたらどの程度の損失が出ていたのかシミュレーションしてみた。 前提条件は下の画像のようにEURCHF1万通貨をレバレッジ500倍で保有し口座は円口座とする。FxProで提供されている計算機によると、必要証拠金は2719円、1ピップあたり131円となる。

もし2000ピップスで強制ロスカットされた場合、26万2000円の損失となる。必要証拠金は2719円なのでこのポジションを取るために必要な実際のお金は1万円もあれば可能だ。口座に数万円しか入金していなくても26万円もの損失となるのだ。
ストップロスと強制ロスカットを過信しない
ストップロス注文は損失を限定するための注文だが、FXにおいては「その価格に達したら成行注文を出す」というものだ。そのため、今回のスイスフラン暴騰のように非常に値動きが大きく、流動性が低い場合はストップロスの価格で約定しないケースは多い。特に今回は流動性が通常では考えられないほど低かったため、価格の下落率に対して出来高が非常に少なく、予想以上に大きな損失を抱えたトレーダーが多かった。
これは強制ロスカットにも同じことが言える。市場に存在しない価格で約定することはできないため、どうしても決まった価格で決済し損失を抑えることにも限界がある。
しかし、通常の市場の状態であれば問題なく決済されるため、あくまでも大きな動きの時に限る。
追証のない業者で取引
FXにおける追証とは、損失が口座残高を上回り、口座残高がマイナスになることを指す。FXがリスキーでギャンブル性が高いと言われるのは、口座残高の何倍もの損失が発生する可能性があるからだ。
海外FX業者では、どれだけ損失が出ようと入金した額以上の損失は払う必要なし、としている業者は多い。そういった業者を利用していれば上記の損失シミュレーションで26万円の損失が発生したとしても、1万円しか口座になければそれだけで済むのである。
ちなみに、追証がある(マイナスが発生したら払う必要があると明言している)業者でも実際に請求されることは少ない。次に入金した時に相殺されたり、マイナスをリセットされたりと対応は様々だが、これは取り立てが難しいことや建前上「追証の責任はある」と伝えることで責任感のあるトレードをしてほしいという業者の意向だ。
あえてハイレバレッジで取引をする
レバレッジとは基本的に、「取引に必要な証拠金」を計算するのに用いられる。しかし、実効レバレッジという言葉もあり、こちらは「資金の何倍の取引をしているか」を示す。前者のレバレッジが高い場合のメリットを挙げてみよう。
レバレッジ25倍でEURCHFを1万通貨取引した場合の必要証拠金は54,131円となる。仮に口座に20万円あったとしEURCHFの暴落で口座残高がゼロになるほど損失が出た場合、レバレッジ500倍の1万円程度しか入金していなかった口座と比較すると損失の差は歴然となる。

口座のレバレッジが500倍のほうが実効レバレッジは高くなり、取引量に対しリスクが大きいという意味になるが、必要証拠金が少なければ同じ取引量でも少ない資金で済む。前述の追証のない業者でハイレバレッジ口座を使用することで、リスキーなようなで損失を限定することが可能となる。
当然ながら、ハイレバレッジ口座で実効レバレッジを低くするトレード方法がベストではある。
無くなっても良いお金だけを入れておく
次に予想外の損失に対応するために、FX口座にはゼロになっても痛くない程度のお金のみを入金する。さらに、利益が出て口座残高が増えてきたら一旦出金をすることをおすすめする。取引口座を複数開設しリスクヘッジするのも良いだろう。ゼロになることを想定しておくのだ。
今回のような大事故は珍しいことだが、決して遭遇しない事故ではない。FXを続けていればいつか遭遇するはずだ。それまでコツコツと利益を積み重ねていても、一回の事故ですべての利益を飛ばしてしまっては意味が無い。
複数のブローカーを利用する
リスク分散のために複数のブローカーに資金を分けて利用するのも良い。理由として、資金を分散し破綻リスクを軽減、いずれかのブローカーのサーバーがダウンした時に別のブローカーでヘッジポジションを取るため、などが挙げられる。
なぜ同一業者の複数口座ではなく、複数のブローカーなのかというと、ブローカー側は顧客を口座ごとではなく顧客ごとに管理するためだ。
スイスフランショック後、ニュージーランドのExcel Marketsとマルタ共和国のFXDDは、マイナス残高になった口座を別の口座(同一人物の別口座)の残高と相殺したことがある。通常の営業であればマイナス残高をこのような形で穴埋めするブローカーはないが、Excel Marketsは破綻、FXDDは破綻しなかったものの相当影響が大きかったのだろう、別の口座から勝手に資金を引き出したことになってしまった。
こういったことは大変珍しいことだが、あり得るかもしれないと想定し複数のブローカーを利用するのが良い。
今回は海外FX業者の特徴を利用した、トレード手法には関係のないリスクをコントロールする方法を紹介した。FXに勝つ方法ではないが、リスクコントロールをすることはFXで勝つには必ず必要なことだ。 スイスフランの暴騰に巻き込まれた人もそうでない人も、FXにはリスクがあることを忘れてはいけない。